「あの、涼くん。」

話しかけてきた咲菜に、
僕は少し間を空けてから冷たく反応した。

「何の用?」

「い、いや。特にこれといった
用事という訳ではないのですが...。」

「あ、そ。」

咲菜は突然の僕の変わりように
驚き、戸惑っているようだった。

良心が痛むけれど、仕方ない。
これも全て咲菜の為なのだから。

「あの、涼くん。
急にどうしたんですか?
いつもはもっと、優しいのに...」

困ったような声音に、
僕の中の何かがぷつりと切れた。

「今さら何言ってんの。
全部、忘れたのはそっちなのに。」

「ちょっと一ノ瀬!!」

クラスメートの1人が
僕をとがめるように鋭く言う。