家に帰った。

なんだか頭がモヤモヤして、
制服のままでベッドに倒れ込む。

ポケットが震えた。

スマホを取り出すと
誰かからメッセージが来ている。

『涼くん。さっきはごめんなさい。』

咲菜だった。

既読だけつけて携帯を机の上に置く。
これから僕たち2人が関わり合う
ことは2度とないだろう。

もともと来年から僕は
県外の学校に転校することに
なるのだから、今こうして
別れようが大した変わりはないはずだ。

転校の理由は、父さんのことだった。

知らない男に妻を殺された
父さんはついこの間までずっと
家に引きこもっていたけれど
1か月前、急にパティシエになりたいと
言い出したのだ。