だけど、今の僕には
口から吐く言葉を止めることが
出来なくなってしまっていた。

「僕は、忘れてない。
何もかもはっきりと覚えてる。
咲菜は覚えてないだろうけど、
僕の母さんは...」

「それ以上言うな!」

「一ノ瀬どうしたの急に。」

クラスメートに後ろから口を塞がれる。

これは演技。演技なんだ。

そのはずだったのに、
いつの間にか本気で怒りを
ぶつけそうになってしまっていた。

「......っ。」

呆然としている咲菜を置いて
荷物を持つと教室を出る。

「今日、早退するから。
僕はもうこの教室には来ないよ。」

君を傷付けないために。