そんな、山田を多くの友人が笑った。そして、私もそんな中の一人であった。




ただ、今、想うのだ。彼が1番、人間らしい生き方をしているのでは?と・・




20分も歩いただろうか、いつの間にか雨が降り始めた。




私は、もう一度、多恵子に電話をした。




「雨が降って来た。傘を忘れて来てしまって・・

迎えに・・」




そう言い掛けた瞬間、電話は切られてしまった。




「死ぬ時によ!幸せな人生だった思える人生を送りたい・・」




ふと、山田のもう1つの言葉を思い出す。




私は、死ぬ時の「自分の人生は幸せだった」と思える人間か?




そんな生き方をしている人間なのか???




そう考えると虚しく涙がこぼれた。




今の私は、飾りである。




優しい旦那、優しい父親、そんな世間体を守る為の飾りである。




歩き始めて1時間、ずぶ濡れになりながら自宅に戻る。




玄関に入ると娘の葵が二階から降りてきた。