あっさりあたしから目をそらして、距離をとる。
利人のしつけ方は、昔から雑なんだ。
冗談でも、少し脅しておけばあたしが言うことを聞くと思ってる。
チョロくて、アホで、バカな女って思ってるに違いない。
「土屋くんはさあ、いい加減、特定のカノジョとかつくらないの〜?」
少し前を歩くふたりの会話を盗み聞き。
どこまでもお行儀わるいあたし。
「んー。そろそろつくろうかな」
「えっ、ほんとにっ?」
隣で、斉藤くんがなにか話してるけど、それどころじゃない。
「誰と? もう、候補とかいるの?」
ドク、ドク。
心臓うるさい、止まって……。
いや、止まっちゃだめか、しんじゃうし……。
とか、アホなことを考えてるうちに、会話は進む。
ごくりと息を呑んで、止めて。
「別に……。なゆ以外なら、誰でも」
そのセリフに……トドメを刺された。