睨むと、利人が耳元に唇を寄せてくるからびっくりする。
「折るな」
「……っ」
近い……。
ブラックモードのときの利人は、こうやって、周りにはバレないように叱ってくる。
「あと1折りくらいしていいじゃん」
負けじと反抗するけど
「バラすけどいーの?」
あくまで冷静に、淡々と責め立てるから。
「それは……だめ……」
近い距離に加えて、ずるい一手で効果はテキメン。あたしはしょんぼりうなだれるしかない。
「次短くしたら犯す」
「おかす?」
「おまえのこと犯すよ」
「……犯すの?」
利人の言葉を繰り返してたしかめる。
冗談めいた薄笑いは、「土屋くん?」という女の子の声と同時に消えてしまった。