湧き上がったお風呂からもくもくと生まれる湯気が視界を白くする。

それと同時に広がる熱が、余裕のない頭をさらに侵して。




利人の手が──────ほっぺたに触れる。


そしてこっちを向け、って言うみたいに、ちょっと強引に口元を引き寄せた。



……あ。


と思った直後には、目の前は暗かった。




「……───っ」



ぴたりと綺麗に合さって。

いつもどこか雑な利人らしからぬ、やけに丁寧なキス。




「……は、ぁ」



唇が離れて、忘れてた呼吸を取り戻した。
相手の顔を見る。



……だめ。気を抜いたらいつもみたいにポワーンってなって
違和感はなかったことにしちゃうから。




「……、なんで?」


なんでキスするの?



ちっとも冷静じゃなかったけど。

心臓がバックンバックンでおかしいくらい冷静じゃなかったけど、頑張って口にした。