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玄関先で心臓が止まるかと思った。



灯りもついてない屋根の下。

うずくまる影がなゆだとわかった瞬間、また別の意味で心臓が止まるかと思った。




「なゆ? なにしてんの……おまえ、」



戸惑いでかすれた声がでた。


スマホの電灯をつけて姿を照らす。



制服のまま──────髪も肩も濡れて。



はあ?

なんで……。



思わず荷物を捨てて目の前にかがみこむ。




「なゆ、」



顔を上げるばかりで返事をしない。

しばらく見つめていると、俺を映した目から大粒の涙があふれ出した。



りひと、と声にならない声で呼ばれると、なにもわからないのに喉の奥が苦しく狭まる。