浮き沈みのないトーンでそう言うと、スタスタと前を歩き始める。


「あ…」と、1秒遅れて反応したアヤノさんは気まずそうにあたしを見て、それでも最後は利人を追いかけていった。



斉藤くんとふたり、残されて。

あたしはは恥ずかしさとやるせなさで顔がぐわぐわ熱くなっていく。



利人はどんなときも冷静だからきらい。

少女漫画や恋愛小説ででドキドキするあたしと違って、手を握っても抱きついても顔色一つ変えないんだから。



今のはあたしを守ってくれたんじゃなくて、面倒事にしたくなかったから、都合のいいセリフで終わらせたってところだ。どうせ。


利人のせいで『どうせ』が口癖になっちゃう。



「なゆちゃんと土屋って、ほんとに兄妹みたいだよなー」



隣でケラケラ笑う斉藤くんは、その言葉であたしが傷ついてることに気づいてない。