あきらはどうして私の名前で働いてんだろ?
あきらにむらがる変な女子が、嬉しそうな顔で私の名前を呼ぶ様子を想像して、私はとても具合が悪くなった。あきらはバカみたいに卑怯だ。何考えてんの。
夜の8時くらいに布団の中にもぐりこんで10時くらいに目が覚めて、今すぐAに行ってあきらの店を訪ねてあきらの顔をぶんなぐろう、って思ったことは1回や2回じゃない。
私はボコボコに殴られたあきらの顔を思い浮かべて、それをリアルにやってやろうってあれこれ考えながら何回も寝返りを打った。そのうち布団の中では呼吸が苦しくなっちゃってぶはーっと顔を出すと、積み重ねた洋服の上からダイヤの形の手鏡が落ちてきた。薄暗い部屋の中で鏡を覗き込んでホーレーセンのチェックをしてると、殴られたアンパンマンみたいな顔をしてるのは私自身だったってことがわかる。もう本当に人生の全てが嫌になる。
そうしている間にもあきらは私の名前で働いている。
薄化粧が美人の条件だと思い込んでる女の子たちと、なんだか良く分からないマジカルスクールごっこをしながら、さもかっこいい男の子みたいに振舞ってるってわけ。
あたまにくる。
「そんなに男になりたいならなればいーじゃん」とか「女のくせに何男ぶってんだよ」って、私はいつもいつもあきらに対する禁句を口に出したくてしょうがなかった。
冷静に振り返ってみると、私は友達に「彼氏自慢」をしたかったんだと思う。
あきらは私の彼氏的なとこにいるけど「彼」ではない。
あきらには私と同じ機能の性器しかついていない。
私たちはいくらセックスをしても妊娠をしない。それはとても気軽だけど、とてもとても薄っぺらい。子供が好きなわけじゃないのに、そういうコトであきらをつなぎとめられないというのは、私が半永久的に努力をし続けなくちゃいけないってことで、私がオバサンになっちゃったときどうやってあきらを引き止めればいいの?
目に映るグラドルは全部敵。あゆもカエラも全部ダメ。
私は男が嫌い。
あきら以外に癒されるところがない。
気がつけばそう言う状況にハマってた。