あきらはそんなに背が高くない。最近分かったけど、足だって細くないし腕だって短い。
ただ目が二重でかわいい。オンナノコのかわいいカッコしたら絶対モテる。そうじゃなくても人気がある。
あきらはスクールでちょうど一年間働いていた。去年私の誕生日から今年の私の誕生日まで。
一年前にどういう顔であきらが私に会いに来たかってことを、私はあきらの頬の毛まで思い出せる。なんでまたそこそってないの、とか思ってた。
全然話変わるけど、女の子だって顔の毛をそった方がいい。モップに粉を振り掛けたって効かないじゃん? 定着しないんだよね、パウダーファンデ。
それであきらは私にこう言ったわけ。
「お誕生日おめでとう。僕、スクールの面接に合格しちゃった」
私、よっぽどあきらをぶん殴ってやろうかと思った。
そのうち書くけど、私って結構ハード&バイオレンスなんだよね。
でも「合格」って言われたら「おめでとう」しかないと思って、自分の誕生日なのに「おめでとう」って繰り返してました。私、本当にバカモノ。あきらは私を泣かせに来たんだと思った。世界中が敵になった気がした。あぁ、私これから何十何万の女子たちと戦わなくちゃいけないんだ。
ありがちだけど、私はこの世で一番かっこいいのはあきらだって思ってる。
誰かに言うと笑われるから言わない。
「森三中かわいいよね」とかいうレベルじゃない。
笑い飛ばせない。
のろけ話しかできないバカップルみたいに私はバカまっしぐらで、私たちは日曜日にセックスをする。
あきらがスクールでバイトをするようになって、あきらは毎日A駅を使うようになった。私はKで働いているから、近いといえば、とても近い。
でも私は、半年くらい会社帰りにあきらと会う気になれなかった。
女のにおいが染み付いたあきら。
大げさ?
だけど、あきらが男装としてバイトをしてるのは、『「おとこおんな」の自分をちやほやしてくれるから』でしょ?
バイト先の話ばっかしてスクールに入り浸ってるあきらを、私はどうしても許すことができない。
何が言いたいかっていうと、あきらは「自分大好き人間」で、私はあきらを大好きだけど大嫌い。
たまに死ねって思う。
毎日思う。
重症だ。