「陽鞠、まりあ」
「なにしに来たのよ」

剣呑に尋ねる私に、顔を出した母が言う。

「せっかく来てくれたのになんなの、その態度は。ほら、中に入んなさい」

私ひとりなら怒って家を飛び出していたかもしれない。しかし、まりあはすでに修二の腕の中だ。置いていくことはできない。

「ぱあぱ、くましゃんね。くましゃん」
「気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」

父娘はすっかりふたりの世界。私は苛立たしい気分で、パンの入ったビニールをダイニングテーブルに置いた。
五人でパンとスープで昼食にした。修二の土産のシュークリームも並び、まりあはメロンパンではなく一番にシュークリームを手に取っていた。私以外は機嫌よくムードよく昼食は進み、まりあはすっかりご機嫌で修二から離れない。それを見る両親もにこやかだ。

私ひとりが怒っている。なぜ、突然やってきたのだろう。復縁は断った。プレゼントも金輪際いらないと伝えた。
突然訪ねてくるなんてルール違反にもほどがある。

食後、まりあははしゃぎ過ぎたのか修二の腕の中でぐずぐずとし始めた。目を擦っているので眠いのだ。

「まりあ、ママのとこにおいで」
「やら」

寝かしつけるため、受け取ろうとするけれどまりあが離れたがらない。
修二がまりあを抱き上げ、立ち上がった。

「俺で良ければ。寝るかわからないけれど」