リビングダイニングに入りながら、ついきつい口調で両親に話しかける。

「ねえ! まりあにこれ買ったの?」

まりあの我儘に付き合わないようにというのはいつも両親にお願いしていることだ。甘やかすのはよくない。

「違う違う。今日届いたのよ」

母が味噌汁を温め直しながら答える。リビングのソファ横にはぬいぐるみが入っていたとおぼしき段ボール箱が置かれてある。配送元の住所と名前を見て愕然とした。

「修二から!?」

修二からまりあへの贈り物だ。宛名は丁寧にもまりあ宛になっている。私宛じゃない。

「私がいたら受け取り拒否したのに」
「まあ、陽鞠。そんなこと言うもんじゃないわよ」
「まりあも喜んでるじゃないか。陽鞠、修二くんに御礼の電話くらいしなさい」

両親はまったく気にしていない様子だ。

「冗談じゃないわ」

修二のことだ。私が受け取り拒否をしないように平日の昼頃到着で送ったに違いない。
まりあはぬいぐるみをぎゅうっと抱き締め、「おー、よちよち」なんてすっかりお姉さん気分でいる。今から取り上げて送り返すことも、もうできないだろう。

「まあま、ぱぱくれたのよ」
「そうね」
「ぱぱにもしもししゅる?」
「また今度ね!」

つい苛立った口調で答えてしまい、はっとした。見ればまりあはくまのぬいぐるみを抱き締め、目に涙を溜めている。私に怒られたと思っているのだ。