その日は木曜店休日、私はまりあと母と午後に中華ちまきを作っていた。
まりあは検品係なので、タコ糸で括られた竹皮の包みをじろじろ眺めて、「よし!」と言いながらてんっと手のひらで叩く係だ。
その仕草だけで可愛すぎて、係に任命してよかったと思う。
すべて蒸し器に入れて並べて火を入れると夕方だ。日が暮れるのが遅くなったので気づかなかった。
蒸し器がしゅんしゅんと音をたてている中、家の電話が鳴った。なんだろう。最近、知人はそれぞれのスマホにかけてくるので家の電話が鳴るときはセールスか地区の用事くらいだ。

「はい」

なにげなく出ると聞いたことある声が聞こえてきた。

『平坂さんの御宅でしょうか。陽鞠さんはいらっしゃいますか?』
「……私ですが」
『私、江田沼法律事務所の矢沢と申します』

もしかして、と思ったらやはりだった。矢沢麗奈さんじゃない。

「え? 和谷に何かありましたか?」

思わず緊迫した声で尋ねてしまった。だって、修二本人が電話できない状況だからかけてきたんじゃないの?

『誤解なされませんよう。和谷先生はご無事です。体調的には、おそらく』
「はあ?」

矢沢さんがわけのわからないことを言う。