「三年間、ふたりを取り戻すことだけが目的だった。陽鞠とまりあに選んでもらえるような男になろうって思ってた。仕事をして、事務所内や地域で立場を確立して、一人前の弁護士になって、もう一度陽鞠に好きになってもらえるように」

修二の言葉に自分の心のピースが埋まっていく感覚を覚える。やっぱり私はまりあに嫉妬していたんだ。私は子の母としてではなく恋人として修二に必要とされたかった。そして、はっきり言葉にされれば、その部分が優しく満たされていくのがわかる。
修二は変わらず私を愛してくれている。
それならば……。

「別れたとき、私たちふたりともボロボロだったね」

私の口調が変わったことに、修二がぴたりと止まる。
私は身体の距離を置き、彼の腕に手を添え見上げた。ちょっと泣きそうな顔をして見えただろう。

「嫌いになったんじゃない。傷つけ合うことに疲れたの。これ以上修二と言葉と態度で殴り合いたくなくて別れたの。もしやり直したとして、まりあのために私たちは自分を殺せる? 修二も私も、譲れない部分を譲れる?」
「あの頃とは違う。きっと、いい方法が見つかる。一緒に試してほしい」

私は力なく首を振り、修二から離れた。

「試せるほど、気楽なものじゃないわ。親なんだから」