頬に添えられる手、髪を梳く優しい指先。修二の香り、温度。すべてが懐かしく慕わしい。
だけど、私は自らその愛しい温度から抜け出した。

「……まりあのためにやり直すのは、きっと正しい。親として」

私は唇を離し、間近く修二を見つめた。

「だけど、私たち個人には正しくない。私たちは夫婦として失敗したんだもの」
「失敗したら、二度とやり直せないものなのか? 違うだろ?」

修二は首を振り、再び私に口づけようと、身体を引き寄せてくる。私は手で修二の肩を押し、距離を取ろうとした。修二は焦れたように言う。

「一月にまりあに会いたいと俺が陽鞠に手紙を送ったとき、本当に俺の気持ちが娘だけに傾いていたと思うのか? 陽鞠だって気づいてくれているんだろう? 俺が誰に会いたかったか。誰を迎えに行きたかったか」

視線を合わせようと修二は真剣に見つめてくる。私はかぶりを振る。

「別れたときから、片時も陽鞠を忘れたことなんかない。一度は手放してしまったけれど、いつか絶対に迎えに行こうと思っていた」
「そんな……今更でしょう」
「言い訳してるんじゃない。最初にまりあを理由に復縁を申し入れたのは、陽鞠の情に訴えたかったからだよ。俺のこと、もう好きじゃなくても、まりあのためなら一緒になってくれるんじゃないかって期待があったんだ。そのくらい必死だった」

修二は切ない瞳で私を捉える。