食卓を片付け、洗い物やゴミの始末を終えて戻ると、修二がまりあをソファに運ぶところだった。

「帰りはタクシーにするわ」
「それがいいかもな。俺が払うから」
「いいわよ。結構するし。そのくらいは育児必要経費ってことで」
「だから、余計に俺が出したい」

言い張る修二の前に缶チューハイをひとつ置いた。私も隣に座り、自分の分を開ける。

「お疲れ様」

修二とふたつの缶をぶつけて乾杯した。なんだか懐かしい感覚だ。
でもこんな日くらいはいいよね。まりあのために協力して頑張った一日だもの。労い合ってもいいに違いない。

「今日、すごく楽しかったな」

修二が言った。声がすでに寂しそうだ。私は頷く。

「私もまりあもめちゃくちゃ楽しかったよ」

まりあの笑顔をたくさん見られた。ここ最近、元気がなかったまりあが、幸せいっぱいに走り回っていた。素敵な一日をもたらしてくれた修二に感謝したい。

「まりあの中の寂しい気持ちがちょっとでも融けてくれるといいんだけど」

私の言葉に修二が額に手をあて、ふうと嘆息した。数瞬の無言が挟まり、やがて低い声が聞こえた。

「俺が手を離さなければ、よかった」
「なに? なんのこと」

修二の言葉の意味をはかりかねて顔を覗き込むようにする。修二は切なく瞳を伏せていた。