私たちが同棲したマンションは千葉寄りの地域で、赤ちゃんが産まれるからと2LDKのファミリータイプを選んだのだった。近くに公園があるとか、小学校が近いとか、ふたりで見て回ったっけ。
たったふた月ほどしか住まなかったあの家と、同棲の記憶。今思い返すと、もうさほど痛い記憶ではなくなっているようにも思える。
時間のせいなのか、まりあを挟んで私と修二が新たな関係を築き始めているからなのか……。
「さて、お夕飯の用意をしましょうか」
私は張り切ってキッチンに立った。
修二の部屋はありとあらゆるものがひとり分しかないので、紙皿や割箸は途中で買った。フライパンはある。鶏肉のクリーム煮を作り、一緒に買ったパンで夕食にした。
「ぱぱ、あーん」
まりあは修二の隣に座り、パンをちぎっては修二の口に放り込もうとしている。
「まりあ、パパにゆっくり食べさせてあげて」
私が注意すると「まま、らめ!」と怒り返してくるので、パパをめぐる女の闘いみたいになってしまった。
それを修二は緩み切った幸せな笑顔で眺めているのだから、こっちも調子が狂う。
しかし、まりあの天下はそこまでだった。一日はしゃぎ倒し、移動もかなりしたせいか、まりあは食事の途中からこっくりこっくり舟を漕ぎだし、しまいにはこてんとテーブルに額をくっつけた。修二が寄りかからせると、間を置かずに眠ってしまった。
「寝ちゃったね」
私はまりあの口元と手を拭き、修二から受け取ろうとする。ほぼ食事も終わっている修二は膝に寄りかかる娘を優しいまなざしで見下ろしていた。
「もう少し、このままで」
「ん、わかった」
たったふた月ほどしか住まなかったあの家と、同棲の記憶。今思い返すと、もうさほど痛い記憶ではなくなっているようにも思える。
時間のせいなのか、まりあを挟んで私と修二が新たな関係を築き始めているからなのか……。
「さて、お夕飯の用意をしましょうか」
私は張り切ってキッチンに立った。
修二の部屋はありとあらゆるものがひとり分しかないので、紙皿や割箸は途中で買った。フライパンはある。鶏肉のクリーム煮を作り、一緒に買ったパンで夕食にした。
「ぱぱ、あーん」
まりあは修二の隣に座り、パンをちぎっては修二の口に放り込もうとしている。
「まりあ、パパにゆっくり食べさせてあげて」
私が注意すると「まま、らめ!」と怒り返してくるので、パパをめぐる女の闘いみたいになってしまった。
それを修二は緩み切った幸せな笑顔で眺めているのだから、こっちも調子が狂う。
しかし、まりあの天下はそこまでだった。一日はしゃぎ倒し、移動もかなりしたせいか、まりあは食事の途中からこっくりこっくり舟を漕ぎだし、しまいにはこてんとテーブルに額をくっつけた。修二が寄りかからせると、間を置かずに眠ってしまった。
「寝ちゃったね」
私はまりあの口元と手を拭き、修二から受け取ろうとする。ほぼ食事も終わっている修二は膝に寄りかかる娘を優しいまなざしで見下ろしていた。
「もう少し、このままで」
「ん、わかった」