修二のマンションは住所こそ知っていたものの、実際に来てみると本当に銀座のど真ん中にあった。日本で一番地価の高い街は大都会で、まりあは「ひといるねえ」「たくさんいるねえ」とお喋りをしていた。新宿や高円寺で待ち合わせた時は、まりあほとんど寝ていたもんなあ。

「そこの角がうちの事務所。で、うちはこっち」

路地を入ってすぐにあるマンションが修二の自宅らしい。ぼろっと古くさい外観のマンションが意外だった。

「見た目は昭和建築だけど、中は丸々リノベーションしてるから綺麗だよ」

修二の言葉通りだ。入ってみると彼の部屋はドラマにでもでてきそうなほど、スタイリッシュな空間だった。マンション外観とのギャップがすごい

「さすが、弁護士さんね。綺麗な部屋」
「いや、種明かしすると、ここお客さんの紹介なんだよ。外観があれで人が入らないけど、中は綺麗だから借りてほしいって」

なるほど、銀座の不動産屋さんのお客さんなのね。マチベンみたいな仕事も多いって聞くしなあ。

「江田沼先生が人助けだと思えって家賃補助多めにくれるし、事務所は目と鼻の先だし、俺としてはいいことづくめで借りてるよ」
「ちゃっかりしてるわねえ」
「でも、まりあと陽鞠と暮らすにはちょっと狭いかな」

私がちらりと睨むと「冗談、冗談」と笑う。半分以上本気のくせに。