「まりあ、ぱぱんちいくのよ。いくのよ。ばいばいしないよ」

まりあは精一杯修二にしがみついて訴える。その姿に涙が出そうだった。まりあの純粋な気持ちが、パパを求めているのだ。
修二も苦しそうに切なそうにまりあを見つめる。修二の口からは答えられない。
見ていられず、私は思い切って言った。

「じゃあ、まりあ。パパのうち、お邪魔しようか」

まりあが私を見た。

「陽鞠、いいのか?」

修二が尋ねる。私は頷いた。
背に腹は代えられない。まりあファーストのための休日なんだもの。まりあのストレスを溜めて終わりにはできない。

「修二がよければ。ちょこっとだけだけど、一緒にお夕飯食べたら帰るわ」
「俺はいいよ。明日も休みだし」
「お泊りはしないから安心して」

そこだけはしっかり念押しする。まりあがようやくぱっと笑顔を見せた。

「ぱあぱぁ」

修二にぺたりとくっついている姿に、自分の中のわだかまりがくだらないことであるような気さえしてくる。
修二はまりあの髪を優しく撫で梳いていた。
別れの時間がわずかばかり延びたことは、大人には逆に耐えがたい寂しさでもあるのだろう。