昼寝後、絶好調になったまりあはまた園内で散々遊び回った。見る動物すべてに「おお~」と歓声をあげ、つたない言葉で一生懸命喋る。鯉やガチョウに餌をあげ、おおはしゃぎだ。

そして、とうとう十五時過ぎにはぐずりだした。体力の限界だったのだろう。
帰ろうと言っても「いやよ!」の繰り返し。修二が抱っこ紐に入れても、手足をぐんぐん延ばし頭を振って抵抗する。

「まりあ、おうちへ帰ろう。な?」
「いやあ! いやよ!」

大騒ぎして泣き、金切り声のような悲鳴をあげる。困ったなあ。

「まりあ! パパ、困ってるよ! もう帰るの!」

少しきつい口調で言ったら、これが逆効果だった。まりあは顔をぐしゃぐしゃにしておんおん泣き始めた。これでは電車にも乗れない。
落ち着くまで、修二は園のゲートの近くでずっとまりあを揺すってあやしている。私は怒ってしまった自分に反省しつつ、まりあが落ち着くのを待った。
やがて、まりあはすんすんと鼻をすするような泣き方になった。

「まりあ、泣かないで」

修二がまりあの涙と鼻水でべたべたの顔をガーゼのハンカチで拭く。愛おしそうな口調だ。すると、まりあが涙ながらに口を開いた。

「ぱぱとばいばい、やらよ。しないよ」

私も修二も驚いて目を見開いた。
ああ、まりあのぐずぐずの一番の原因は修二との別れを察知していたからだ。せっかく会えたパパとまたお別れだとまりあは知っているのだ。