「もちろん、どこへだって連れて行くよ。俺は陽鞠とまりあの家族のつもりだから。離れていても」

こんな形だって、家族。そうだ。無理に決まりきった形にしなくてもいいんじゃないかな。
まりあがパパに会えて、みんなでたまにお出かけができれば、それは幸せなんじゃなかろうか。
私と修二を夫婦という枠で繋げなくても。
私は……今のままでいたい。

「陽鞠、俺からも“よければ”の話なんだけど」
「なに?」
「これ、食べたら園内、回らない?」

私は少し笑う。

「まりあ、当分起きないよ」
「うん、だからここからまりあが起きるまでは、俺と陽鞠のデートってことで」

私がわずかに身構えたのがわかったのだろう。修二は精一杯茶化した口調で付け足した。

「パパもご褒美がほしいんだけどな。ひと月半、まりあのお世話頑張ったし」
「通勤鞄買ってあげたわよ」
「そういうご褒美じゃないって知ってるくせに。俺、結構遠慮してると思うんだけどな、普段は」

わざと子どもみたいなことを言う修二。私は困って視線をそらし、それから答えた。

「まあ、まりあの体力的にもう少し休ませたいし。ふたりで時間潰ししなきゃだから、いいんじゃない?」
「ありがとう、陽鞠」

修二が嬉しそうに笑った。

「手は?」
「繋がない!」

差し出された手はぺしんと叩いておいた。