「ベビーカー必要だったかなあ」
「興奮してるし、大人しく乗ってないだろ。俺、なるべく手を繋いでるよ。疲れたら抱っこするし」

修二の腰には常に抱っこ紐が巻きついた状態だ。まりあがぐずったら、即抱っこ紐にインできる。ぐずっているときは、高確率で疲れて眠いときなので、そのまま一度寝かしつけてしまう算段だ。
園内は私たちの入ったゲートからはまず遊園地ゾーンが近い。ゲートから池に沿ってさらに進むとレトロなムードの遊園地に到着した。
乗り物には身長制限もあるので、私たちはひとつひとつまりあと乗れるものを見つけチャレンジしていった。あまり混雑した乗り物はまりあが待ちきれないだろうと後回しにする。休日の遊園地はかなりの人出で、食べ物を売っているワゴンやハウスも午前中うちから行列だ。
もう少し奧に進むと動物たちのゾーンに入る。

「まりあ、こっちにキリンさんいるみたいよ」
「きいん!」

まりあのテンションはずっとトップギア状態だ。お気に入りの幼女向けアニメを見ているときより興奮している。今夜あたり熱を出さなきゃいいんだけど。
突然、まりあが修二の手を振りほどき、ばっとダッシュした。

「まりあ、危ない!」

段差につまづき転びそうになったところを、すんでのところで追いついた修二が抱きとめた。
子どもはこういうところが怖い。しっかり手をつないでいたつもりでも、わずかな隙でするりと抜け出すのだ。