何も気付かず、このまま自分の平穏な人生を満喫していれば俺は、傷つかずに剣を握り続けレベッカと笑い合えたのだろうか。
そして、裏切られる事はなかったのだろうか。
「レディック様、もう時間です。ほら、ムーストン先生が叫んでる」
見上げると、本舘の中央に位置する勉強部屋の窓から白髪のムーストンの怒っているような顔が見えた。かろうじて聞こえる叫び声は、王太子殿下への侮辱の言葉のような。
「あれ、絶対椅子に乗ってるよな。あのおっさんが、窓に届くはずがない」
ムーストンは、この上なく背が低く一時はその白髪を無視して、『かわいい坊や』と呼ばれていた。そのムーストンが、自力で窓から顔を出すなど神業に近い。
「行きましょう、レディック様」
俺は上目づかいにレベッカを見つめ、軽く唇をなめた。
「行くぞ!!」
この一歩が、これから始まる時間につながる第一歩なら、俺は踏み出さなかっただろう。
向かう先は、嫌いな教師の待つ勉強部屋ではなく、剣と裏切りが待つ戦場だと分かっていたならば。
そして、裏切られる事はなかったのだろうか。
「レディック様、もう時間です。ほら、ムーストン先生が叫んでる」
見上げると、本舘の中央に位置する勉強部屋の窓から白髪のムーストンの怒っているような顔が見えた。かろうじて聞こえる叫び声は、王太子殿下への侮辱の言葉のような。
「あれ、絶対椅子に乗ってるよな。あのおっさんが、窓に届くはずがない」
ムーストンは、この上なく背が低く一時はその白髪を無視して、『かわいい坊や』と呼ばれていた。そのムーストンが、自力で窓から顔を出すなど神業に近い。
「行きましょう、レディック様」
俺は上目づかいにレベッカを見つめ、軽く唇をなめた。
「行くぞ!!」
この一歩が、これから始まる時間につながる第一歩なら、俺は踏み出さなかっただろう。
向かう先は、嫌いな教師の待つ勉強部屋ではなく、剣と裏切りが待つ戦場だと分かっていたならば。