信じられないのなら、素直にそう言えばいい…。
それができるものが、真に強い者だと思わないか?
「…だけど俺は、記憶を全てなくしていた!!」
ざわめきが、全体に広がっていく。
半信半疑の目や、はなから信じていない目―。
俺は手を握りしめて、言葉を続けた。
「…信じられなくても、仕方がないと思います。俺も最初は自分を信じられなかった。だけどここにいる『レベッカ・ラクロイム』の話を聞き、俺は全てを信じる声にした。
…俺は、王です。
このラ・サズリック王国の王です」
この場所と空気をわきまえない、礼儀も何もない宣言に今さらながらとてつもなく後悔する。
第1印象は最悪。
「約7年前、俺は侵略にきたカスクライ王国ラーバン王にさらわれました。カスクライ王国で2か月間眠り続けた後、目を覚ました俺は全ての出来事を忘れていた。 そして俺はラーバン王に、自分はカスクライ王国第1王太子殿下と信じこませられ、7年間そうして生きてきました」
俺は頭の中で文を整理する事も忘れて、ひたすら必死に喋り続けていた。
自分のその後、『ウィード・ガウン』の事、そして図書室で自分の事が書かれた本を見つけた事。
時々広がるざわめきが、不安をつのらせる。