その間にも、みんな前へと歩き出しているのに。
俺には、絶望と孤独しか残っていなかった。


逃げ道はない。
けど、逃げる気もない。


俺は、硝子の割れる音とドアを強く叩く音で目を覚ました。
急いではね起きると、どういう寝方をしたのか体の節々が悲鳴をあげる。
「レベッカ、どうしたんだ!?」
レベッカは柄に手をかけたまま俺の方を振り返り、人差し指を立てて声を出すな、と示す。
「レディック王が起きられた!!ドアの前を開けろ!!」
その仰々しい言い方に一瞬戸惑ったが、俺はレベッカの導く方向に歩き出す。
何がおこっているのか今だに分かってない頭を軽く叩き、少しだけ残った眠気をはねとばした。
「レベッカ、これって…」
「…さあ、レディック王。最初の、お仕事です」
口では軽い事を言いながら、感情の読み取れないその表情には、少しだけ不安と焦りが浮かんでいた。
廊下には、人1人いなかった。
思わず身震いする程の冷たい朝の空気の中、レベッカは俺の肩に赤いマントをかけた。
首元の金具を留めると、俺が今着ている服に鮮やかな赤がとても似合っているような気がした。
…ただ、時間がきただけだ。
こうなる事は分かっていた。