だけど、レベッカが俺の事を『王』だと言った事は嘘じゃない。
そして、カスクライ王国のラーバン王に殺されそうになったのも『真実』。
何が、証拠なんだろう?
俺は、放心したように動かずただ窓の外を見つめていた。
ラーブルの鳴く声…幻聴が聞こえるような気がする。
…逃げられない。
「レディック様、戻りました」
ラーバン王の笑い声のようなラーブルの鳴き声に、俺は耳をふさいだ。
「レディック様?」
手が、自分ではおさえられない程、震える。
強く唇を噛んで目を閉じても、その暗闇の中からラーバン王が襲ってきそうで、とても怖かった。
「ラーブルの…鳴く声がする」
吐き出すように言うと、レベッカは俺の手を耳元からはずさせ、落ち着かせるように優しく話しかけてきた。
首のうしろを、なだめるように優しく撫でながら。
「レディック様、ラーブルなんて何処にもいません。たとえいたとしても、怯える必要なんてない。…ここは、貴方の国です」
いつの間にか、俺は夢の中にいた。
そこにはラーバン王がいて、ロアとセアがいて、レベッカもいた。
だけど俺だけは、どうあがいても近くにいく事ができなくて、その場にしゃがみこんで泣いてしまう。