視界は、当たり一面火の海だった。おとろえる事を知らない炎は、すぐに自分の小さな体をとりかこむ。
―もう駄目だ。
反射的に、諦めが脳裏をよぎった。
そして、長年願い続けた事に自分がなっていると気付いた。
―今…俺自由なんだ。
願ってもいない状況で、こんなにも願った事になるとは。その途端、自分が生死にかかわる場所にいる事も忘れて、俺は奇声を発した。
「らっっしゃあ!!レベッ カ、俺…」
だが、それも一瞬。
ここには、もう誰もいない。城は跡形もなく消えさっている。
自慢だった庭園も、自分の部屋も、本も、笑い合い互いに背中をあずけた仲間も。絶望が、視界を真っ暗にそめた。
「おい、レベッカ…」
―自分で行動し、自分で判 断し生き残らなければ。そして、一族を…。
その瞬間、聞き慣れた声が辺りに響く。
待ち望んだ剣のような凛々しい声。
「王!!レディック王!! 」
―レベッカか…?王?この 俺が?
「レベッカ!!ここだ!!」
息を吸い込むのと同時に、煙が喉にからみつく。一呼吸が、苦しい。
「王!!レディック王!!」
「レベッカ…」
真っ赤で暗い視界の中で、見慣れた茶色の髪がちらついた。一瞬にして、安心感が体をつつみこむ。