その頃 私は 仕事に 行き詰っていた。


モデル事務所に 所属していても

私が受ける仕事は 小さな物ばかりで。

収入も 生活できる ギリギリだった。


今 芽が出ないのなら 

いつまで 続けても仕方ない…


20代半ばの私は 迷っていた。


モデルを辞めて 定職に就く 同年代の仲間。

私も そろそろ 見切りを 付けないと…


「そんなに 焦ることないよ。納得できる仕事だけ 受ければいいじゃない。」

私が 悩みを打ち明けた時

あっさりと 答えた京一。


「先生は 簡単に言うけど。そんなんじゃ 生活できないもん。」

「んっ?じゃ 俺のマンションに 引越しておいで。そうすれば 涼子 部屋代 浮くだろう。それに俺は ちょっとの時間でも 涼子と一緒にいられるし。」

「えーっ。それって 先生が 私を 養ってくれるってこと?」

「そうだよ。俺 高給取りだから。涼子1人くらい 余裕で 養えるよ。」



「そういうことじゃなくて。私 先生のヒモになるの?」

「んっ?女性のヒモって あんまり聞かないね?」

「だから!二号とか 妾?」

「涼子は 古いこと言うなぁ。俺 独身だから。二号でも 妾でも ないだろう?」

「でも 同じことじゃない?」



「じゃ いっそ 奥さんになるか?涼子は まだ若いから。結婚には 抵抗があるかと思ったけど。」

「先生。そんなこと 簡単に言わないで。」


私は 真剣な顔で 京一を咎めた。


「簡単に言ってるわけじゃ ないんだけど…俺 真剣だよ。真剣に 涼子と結婚したいと思っている。」


京一も 真剣な目で 答えた。


初めて見る 熱い瞳に 私は 射すくめられた。


その時 私達は まだ キスもしていなかったから。