そして最後の嘘をつく

「まぁね。体型維持のためって
言ってマネージャーが禁止にしてさ。
いつも私のご飯を用意するのも
マネージャーだから食べられなくて。」

「肉、どんどん食べてください。
僕はいつでも食べられるんで。」

すすめると如月さんは嬉しそうに
大量の肉を自分の皿に乗せていく。

その姿を見ながらぼんやりと考えた。

クラスメイトの話を聞いたとき、
確か大学3年生って言ってたから
如月さんは23歳なのだろう。

そんな若さで世界的に有名な
ピアニストになっているのだから
本当に大したものだ。

「美味しかった!!」

それだけ言うと如月さんは
ひらりと手を振って帰っていった。

そして僕は、中学1年生以来
触れていなかった奥の部屋の
古ぼけたアップライトピアノに
そっと指を置いた。