---彼が電車に乗ってきた。



私は怖くてずっと下を向いていた。




(変な人に思われたらどうしよう..)



トコトコ、、


彼は私のとなりに来て、


いつも通り外を眺めている。


勇気を出して彼の方を見てみると、



目があってしまった。


(どうしよう、、
 私、ほんとに変な人だよね...)


彼は一瞬驚いたように目を開けてから、


何もなかったかのように


いつも通りまた外を眺めた。




(迷惑、、だったかな?)




せっかく振り絞った勇気も

無くなりかけたその時、




キキイー! ドン!


「いっ、、た、、」



やってしまった。


電車の急ブレーキで

気が抜けてて、ぶつかってしまった。



「あの、、ごめんなさい!!」



動揺でほかに言葉が出てこない。

電車の中は急ブレーキに驚いた人たちの声と

アナウンスの音でごちゃ混ぜになっている。



「だいじょうぶ?
 結構な勢いでぶつかってきたけど、
 怪我は?」



「えっ、、と、、」



優しい声、

優しい眼差し。


やっぱり私は間違っていなかったんだ。


きっとこのチャンスを逃したら

もう一生声をかけることなんてない。


だったら、、

もう一回勇気を振り絞って、、、



「あの、ぶつかってしまって
 ごめんなさい、、
 えっと、ずっと好きでした!
 こんな急に、すみません、、
 話したこととかないのに、、、」


だんだん私の声が小さくなっていく。

生まれて初めての告白は


下手で言葉足らずで


怖くて彼の顔が見られない。



「えっ、、と、」
「俺、結構テレビとか出てるんだけど
 知らない?
 こんな形で話しかけられるの
 初めてでなんていったらいいのか 
 わかんないんだけど、、、」



「えっ?テレビ??」



やってしまった。


テレビ??と言うことは芸能人??

頭が正常に回ってくれない。



思い出した、


友達が言っていた〇〇高校の芸能人は、


きっとこの人のことだ。


その証拠に制服は〇〇高校のものだ。




彼からしたら私はきっと

気持ち悪いストーカーかなにかに

見えたに違いない。



「ちょっと??話聞こえてる??」



自分のしたことが恥ずかしくて

逃げ出してしまいたい。



「あっ、そうなんですか、、
 知らなくてごめんなさい、、、
 あの、ストーカーとかじゃないので、
 警察とかは、勘弁してくださ、、」



---バタッ


全てを言い切らないまま


私はその場に倒れてしまった。