「……か、かわいいわ!」
マイヤーヌは中に入ると辺りを見回す。
まるでオモチャ売り場にでも連れてきてもらった子供のように、キラキラとした瞳を部屋の小物へ向けている。いつものマイヤーヌと違ってちょっと幼く見えてかわいい。
──やっぱりかわいい物が好きだったんだなぁ。楽しそうでよかった。
「マイヤーヌ。よかったら、お洋服も着てみませんか? メイド服なんですけれど、サンプルで作ったものがあるんです」
「私にメイドの格好をしろというの!? 私はあなたの家よりも格下。でも、伯爵令嬢よ」
「メイドといっても屋敷にいるメイドとはちょっと違うんです。こんな感じなんですよ」
私はクローゼットからピンクのギンガムチェックのワンピースとブラウスを取り出した。
これは最初のメイド服の試作品。ボツになって、今は別のデザインの制服で定着している。
「……もしかして、私が着たところを見て、似合わないのを笑うつもりなんでしょう?」
「そんなことをするはずがありませんわ。私、お茶とお菓子の用意をしてきますので、もしよかったらその間に試着してみてくださいね。もし嫌だったら、もちろん着なくても大丈夫です」
そう言い残すと、私はルイーザと共に部屋を出た。
部屋を見た時のマイヤーヌを見て、なんとなくだけれど着てくれると思っている。
紅茶と焼き菓子などのお茶の準備を整えると、私たちは再び更衣室へ。
部屋をノックしようと思ったけれど、私は両手が塞がっている状態だったのでルイーザに任せる。
すると彼女はノックもなしに、いきなり扉を開けてしまう。
「えっ、ちょっと待って。ノックぐらいしてよ、ルイーザ」
動揺する私の瞳に室内の光景が広がっていけば、そこにはクマのぬいぐるみに抱きついているマイヤーヌの姿が。
メイド服姿で今まで見たことがないくらい優しい表情を浮かべながら、ぬいぐるみに頬ずりをしていた。どうやら、私たちに気がついていないみたいだ。
あー、わかる。わかる。あのくらい大きいと抱きしめたくなるのよね。ルイーザは休憩時間に枕代わりにしているけれど。