馬車止めでマイヤーヌと合流した私たちは、うちの馬車でメイドカフェへ。
 さすがに学園の制服を着て正面から入るのは目立つため、お店の裏手で降ろしてもらう。

 なんだか不思議な感じがするわ。
 普段はルイーザと私しか使わない裏手の扉前にマイヤーヌがいるのって──。

 マイヤーヌは怪訝そうな顔をしたまま、辺りを見回して鞄をきつく握りしめ、警戒していた。

「あの……お茶会っておっしゃっていませんでしたか?」
「えぇ。ここでお茶会をするの。さぁ、どうぞ」
 ルイーザが扉を開けて中に入るように促すと、マイヤーヌはすがるような瞳を私に向けた。

 少し意外だなと感じていると、さらに私の制服の袖を掴んできたのでちょっと驚く。
 あまりマイヤーヌにいい印象を持たれていないと思っていたから、まさか頼られるなんて。

「大丈夫です。ここの所有者は私の父ですので」
「そうなの……?」
「えぇ。私も出入りしているカフェなんです。今日はお店がお休みなので」
 私は安心してもらえるように微笑むと、マイヤーヌはほっと息を吐き、私の袖から手を離した。
 中に入ると真っすぐカフェスペースには行かず、マイヤーヌと共に従業員の更衣室へと向かう。
 彼女が本当に〝かわいいものが好き〟なのかを確認するために。

 更衣室と書かれた扉をルイーザが開けると、中はゆめかわ系のメルヘンチックな部屋だった。
 淡いピンクと白のストライプの壁には、白を基調としたドレッサーとチェストを設置し、部屋の中央にはパステルドットのカバーをかけたソファがある。

 ソファにはふかふかの大きなクマのぬいぐるみが座っていた。

 メルヘンチックなメイドカフェにするか、それとも正統派のメイドカフェにするかルイーザと共に迷った揚げ句、一度雰囲気を感じたいとまずは更衣室でイメージをチェックしたのだ。

 結局、お店の方は、幅広い年齢層に来てもらえるように正統派の方にした。
 更衣室は、もったいないのでそのままの状態で使用している。