「金と権力を持っている者が考えそうなことよね。ゲーム内ならば王太子殿下のイベントが起こるんだけれど、あの方は学園に通うより家庭教師を選んだし。そのおかげでこうやって自由に温室を使えているわ。ほら、温室ってゲーム内だと悪役令嬢とヒロインの泥沼イベントが起こるスポットだから……あっ、そうそう! 悪役令嬢で思い出した。お昼にマイヤーヌといざこざがあったって聞いたわ。大丈夫?」
「うん、平気。マイヤーヌにハンカチを注意されたの。まさか、ルイーザの耳にまで入っているなんて」
「ハンカチ?」
原因が予想外だったらしく、ルイーザは裏返った声をあげる。
「注意されるハンカチってどんなのよ? 見せて」
「えぇ」
私はスカートのポケットからハンカチを取り出して見せると、ルイーザはぐっと眉間にしわを寄せる。
ふぅーっと息を吐き、腕を組むと不快感をあらわにした。
「はぁ? なんでこのハンカチで注意されるわけ? 私が持っているハンカチの方が派手よ。難癖つけすぎで意味がわからないわ。こんなの嫌がらせじゃない。本物の悪役令嬢っぽいから、やっぱりやめるわ」
「なにをやめるの?」
首をかしげながら尋ねると、彼女は言う。