アイザックとマイカがメイドカフェに来店した翌日。

 とくにふたりからなにか言われることもなく、私はお昼の時間を迎えていた。
 ランチ後の暖かな昼下がりの中庭は、生徒たちが集まり賑わっている。

 私とラルフは、アイザックを挟むようにしてベンチに座っていた。
 ふたりは女子に大人気なので、周辺にいる女子生徒の黄色い悲鳴が聞こえてくるようだ。
 とくにアイザック人気が高い。ゲームの世界では、一番人気は王太子殿下だったけれど……。

 ふとアイザックを見ると、視線を感じたのか彼も私の方を見ていて視線がぶつかる。
 すると、アイザックはぱっと頬を染め、ラルフに抱きついた。女子生徒の歓声があがる。

「あー、はいはい。かわいいですね。どうぞ、生のシルフィを堪能してください。五年分の空白を埋めるためにも」
 ラルフは肩をすくめながら、アイザックの背を軽く叩く。

「シルフィ。実は僕、ずっと前から聞きたかったことがあるんです。ウォルガーとの婚約は解消しないのですか?」
「解消もなにも、私とウォルガーの婚約は陛下の命よ。グロース家もアエトニア家も関与できないわ」
「ですよね。四大侯爵の結束を強固に結ぶための婚姻ですから。なんとも歯がゆい」
 ラルフはため息を吐き出す。