領地であるアッシャードの問題が無事解決し、これで心をわずらわせることがなくなったかと思ったが、今度は私にとってある問題が浮上している。

 ――と言っても幸せな問題なんだけれど。

「やっぱり、従業員を増やした方がいいかなあ。あとでルイーザに相談してみようかしら?」
 メイドカフェは、午後のティータイムを堪能中のお客さんで満席だ。
 お客さんの楽しそうな賑わいを聞きながら、私はメイドカフェのカウンター内で予約表に書き込みをしていた。
 
 ありがたいことにランチタイムはすでに予約でいっぱいだ。

 そもそもはアッシャードのリネン製品を広めるためのアンテナショップを兼ねたメイドカフェだったけれど、カフェ単体でも大人気に。
 そのため、私とルイーザのふたり体制ではかなり厳しく、お昼は完全予約制にしている。

 カフェタイムは今のところ予約なしで入店可能だけれど、こちらもさらに混み始めたら予約制に切り替えるしかないのかもしれない。
 予約表をしまった時、ちょうど爽やかなウィンドチャイムの音がお客さんの訪れを知らせた。

「おかえりな……え!?」
 出迎えをしようと扉に向かった私は、固まってしまった。
 だって、扉の前に立っていたのは、マイカとアイザックだったから──。

 ふたりは初めて見る〝メイド〟に驚いたようで、私同様に固まっている。
 どうしよう! 変装しているとはいえ、声を聞いてバレた可能性がある。

 アイザックは口止めしたら黙っていてくれると思うけれど、マイカはどうだろう?
 頭が真っ白になったが、辛うじて平静を保ちつついつもどおりの微笑みを浮かべた。

「おかえりなさいませ、ご主人様。お嬢様」
 内心ヒヤヒヤしながらも、明るく元気に出迎える。

「ごっ」
「お、おじょ」
 ふたりともぎょっとした表情で、一気に頬を染めて両手で顔を覆った。