そのままいけば確実に窮地に陥ったはずのに、なぜかオルニス商会とサイファ商会がしゃしゃり出てきて、私の計画がすべて台無しになったのだ。
十大商会のうちふたつの商会が契約したせいで、結果的にグロース家の事業を拡大させてしまうことになった。
「この先のことを考えるのは、お父様のお仕事なのではないですか。私が最初に出したアイデアは大成功でしたわ。お父様がとどめを刺すことができなかっただけです。まさか、オルニス商会とサイファ商会が契約するなんて。ちゃんと侯爵の行動を見張っていないからでは?」
「なんだと? 私のせいだと言いたいのか」
「えぇ。そうですわ。お父様のせいです」
「む……。だが、今は誰に責任があるかで争っている場合ではない!」
耳障りな声を聞き、ため息をつく。
「あー、もう。つばを飛ばさないでくれます? 私のケーキが台無しですわ。ちょっと、ケーキもお茶も全部下げて。すぐに新しいものを持ってきなさい」
メイドに命令し、立ち上がって窓を開けると、爽やかな風が頬をなでる。
あぁ、でもこの程度の人だからグロース家に対抗できないのよね。ほんと我が父ながら使えないわ。
「次の策を講じなければ! シルフィ・グロースめ。あの娘がしゃしゃり出てきたせいでおかしくなった」
「……どういうことですの?」
私は片眉を動かしながら問う。
「知らないのか?」
お父様は椅子に座ると、こちらを見ながら目を大きく見開いている。
「我々の計画を阻止する策を考案したのがシルフィだったんだ」
「なんですって? あの女が……!?」
「お前こそ、シルフィに敗北したことになるな」
私は目を細めるとお父様を睨んだ。
冗談じゃない。私は負けてなんかいないわ。お父様やグラジ商会が失敗したからよ。
こうしてはいられない。なにか次の策を考えなくては。
そして今度は私が直々に指揮を執るわ。