私はちょっとした期待を抱く。

「えぇ」
「製品を拝見してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、お入りください」
 私が中へ入るように促すと、ふたりは室内へ足を踏み入れた。

 三人で製品を展示しているコーナーに行くと、男性がブラウスを手に取って肌触りを確認し始めた。
 その隣では、ジグさんが鞄から万年筆と紙を取り出してメモの準備をしている。

「リネンの産地はどこですか? 質がいいですね」
「アッシャードです」
「なるほど。寝具以外も作れるということですか。このクオリティならいけるな」
ジグさんは男性に向って口を開く。

「俺の査定、上がりますかね? ここを見つけたのは俺なんですが」
「商機を見失うなって、前にあれほど口を酸っぱくして言ったのに、さっそく見失いかけていたのは誰だ。今までずっと黙っていたじゃないか。たまたま俺がお嬢様とお前の話を聞いて知ったからよかったものを!」
 まるで雷が落ちたような声量で怒られたジグさんは、唇を尖らせながら軽く耳を塞いでいる。

「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないですかっ。俺、怒られるならルイーザさんに怒られたい。踏まれたい。このクズがって罵られたい」
「お望みなら罵ってやるぞ?」
「結構です。ルイーザさんにならって話で、ニキ先輩にじゃないですから!」
 ジグさんは私の背に隠れるようにして逃げた。

 あの……これはいったい……?