「〝エクレールの方が十分悪役令嬢〟じゃない! 私が忠告しようか? 一応、公爵令嬢だし、王太子殿下の婚約者だし」
「ううん、きっと認めないと思う。それに、今はなんとしてもメイドカフェを成功させたいの」
「たしかに一理あるわね。ちなみに、カフェの従業員は決まっているの?」
「私以外はまだ。求人募集をかけようかなと思っているんだけど」
「それなら紹介できるわ。調理師の資格を持っていて、実家が洋食店の人を」
「本当? 紹介してもらえるとうれしい」
調理の経験者なら大歓迎だ。と、ルイーザが両手で私の手を掴んだ。

「その人物って実は私なの。前世で調理師だったんだ。そして実家が洋食店。五年間の修行を終えて実家を手伝うために戻ろうとしたら、病気で……。あー、なんで貴族令嬢になんて転生しちゃったんだろう。料理が大好きなのに、包丁を握ることすら許されないだなんてストレスたが溜まりまくりの日々よ!」
 そう早口でまくし立てるルイーザ。
 好きなことを我慢するつらさは私にもよくわかる。私にとってそれは裁縫だ。

「私としては問題ありません。ですが、公爵家が……」
「それはこっちでなんとかするわ。もちろん、バレたら私が責任を負う。だから、お願い。私に居場所をちょうだい。このままだと息が詰まっちゃう」
 メイドカフェが彼女の居場所になるなら、喜んでその場を提供したい。

「では、お願いしてもいいかな?」
「えっ、本当!?」
「もちろん。よろしくお願いします」
 私の言葉を聞いた途端、ルイーザは顔を輝かせて私に抱きついた。

 まるで子供のようにはしゃぐ彼女は、いつもの凜とした姿とのギャップがかわいい。
 こうしてルイーザが仲間になり、メイドカフェの計画がスタートした。