授業が終わったある日の放課後。
 私は中庭にあるガゼボでスケッチブックを膝の上に広げていた。

 メイドカフェを経営するにあたり、お店に関することはすべて私に一任されることになった。

 お店の内装や制服など決めなければならないことが山積みだ。
 頭に浮かんだイメージをスケッチブックに次々に書き出していく。

「まず、カフェのコンセプトを決めなきゃ。内装や制服はそれからね」
 メイドカフェの目的は、リネン製の衣服の宣伝だ。
 そのため、メイド服も重要だ。

 日本でよく見かける膝丈が動きやすいかな。

 さまざまなデザインをスケッチブックに走らせていく。
 すると突然、「あら、かわいい!」という女性の声がして、私の心臓が大きく一回跳ねた。
 振り返ってさらに驚く。

「ル、ルイーザ様っ!」
 そこに立っていたのは、ルイーザ・ハーゼ様だった。

 彼女は私と同じゲーム内の悪役令嬢であり、王太子殿下の婚約者。
 殿下は学園に通っていないので、事実上の学園トップの座に君臨しているのは彼女だ。
 ご挨拶するため、慌てて立ち上がる。

「驚かせてしまったようでごめんなさい。さっきスケッチブックが見えたんだけど、メイド服にカフェって、まるでメイドカフェみたいね」
「メイドカフェをご存じなのですか?」
「えぇ、知っているわ。前世で兄と行ったの。ねぇ、シルフィ様。ちょっと伺ってもよろしいかしら? あなた、メイドカフェを知っているってことは、もしかして転生者?」
「えっ……!?」
 衝撃的な台詞に驚く。