二十一歳で目標金額がたまりそうなのは、私だけの力じゃない。
 幼なじみで親友の凜々花(りりか)のおかげでもある。

 地元の高校を卒業後、凜々花が『私も雫(しずく)と一緒にカフェ経営がしたい!』と言って上京。ルームシェアをすれば、生活費が浮くから一緒に暮らそうと誘ってくれ、ふたりで暮らしながら六百万円をためることに。

 凜々花名義の通帳をつくり、開店資金をふたりで毎月入金している。

 長かった。目標額が途方もない金額だったし、睡眠時間を削っての生活はすごくつらかった。 
 でも、それも今月のお給料日に終了。

 これからはカフェ経営の方で忙しくなるなぁ。大家さんと賃貸契約を結んだり、内装業者と打ち合わせをしたり……。
 
 早く完成したお店が見てみたい! カフェのことを考えるだけで疲れが消えちゃうわ。お金がたまったら、凜々花と一緒にお祝いをしよう。ケーキの予約をしておこうかな?

 はやる気持ちを抑えきれずにいると、鐘の音色が響き渡った。
 公園内にある大時計が十八時を告げたのだ。

「そろそろ品出しのバイトに行かなきゃ」
 私は立ち上がると、ノートをトートバッグにしまい、カーディガンのポケットからスマホを取り出しメッセージが届いていないかチェックする。

「……ん?」
 ディスプレイにとあるアプリのポップアップ通知が表示されたので即タップする。