「マイカはシルフィ派のようです。よくシルフィのことを物陰から見ておりますので。お友達なんてこちらから遠慮しますわ」
「またグロース家の者か! 腹立たしいことこの上ない」
「お父様。陛下に四大侯爵に戻してもらうようにお願いしてみては?」
「何度も直訴したさ。だが、当時の当主が行なった不正について問われると、こちらも物が言えぬ。墓場まで持っていく覚悟でいればいいものを。そのせいで子孫である我々がこのように肩身の狭い思いをするはめになったのだから、なんとも恨めしい」
「本当にそうですわ。なんて愚かな」
 我がラバーチェ家では歴代当主の肖像画を飾っているが、汚名を着せられた三代前の当主の肖像画は焼却処分された。

「なにかいい方法はないだろうか。グロース家を破滅に導く方法は」
「領地経営に関してグロース家は、うちと違ってクリーンですものね。領地アッシャードのリネン事業も順風満帆。つつくところがないですわ」
「リネンなんてどこにでもあるんだがな」
「アッシャードのリネンは高級寝具ブランドでシェア率が高いです。リネンを寝具にするのは王族と貴族の間で昔からの習わしですし。別の寝具ブランドのリネンが流行すればまた話が……あっ、そうですわ!」
 私は勢いよく立ち上がった。脳裏にひらめいた案に自画自賛したくなる。

「ふふっ」
 心の底からの笑いがこみ上げてくる。
 見てなさい、シルフィ。私の場所を返してもらうわ。
 急に笑いだした私を、お父様が訝(いぶか)しげな顔で見ていた。

「お父様。私に考えがありますの。正攻法でグロース家の領地経営を窮地に追い込みますわ──」