大切な幼なじみの秘密が世間に露呈して立場が危うくなるのはなんとしてもさけなければならない。
 すると、マイカは胸を張って口を開いた。

「当然ですわ。私がシルフィ様の秘密をしゃべるわけがありません。シルフィ様は私にとって憧れの人。尊ぶ天使様ですから。それに真実を知るのに苦労しましたし」
 まさか、マイカとシルフィとの間にそんな接点があったなんて。

「宝石を換金しにきた人をたどると、すぐにグロース侯爵の使用人につながったのですが、そこからは難航しました。そこで、ある日グロース侯爵邸に調査目的で近づくと、私と同じ年代の子供の笑い声が聞こえてきたんです。なんとなく笑い声が気になり、生垣をガッと手で開けて中を覗いたら、編み物をしている天使様が見えました」
「人の屋敷の生垣に穴をあけるなよ……」
 俺は呆れてそう言う。

「ちゃんと生垣の修復代金は置いてきました。それより、アイザック様はシルフィ様と出会ってどれくらいの期間ですか? 私は十三歳からなので、もう三年ですわ。私よりも長いのですか?」
「長いな。十二歳の誕生日ちょっと前くらいの頃からの付き合いだから」
 マイカに聞かれたことに対して返事をすると、彼女は舌打ちをした。

「私の方が長いと思ったのに……!」
 本当にめんどくさいやつだ。
「マイカに言っておくことがある。気づいていると思うが、俺の正体は秘密だ。学園内では、学園長しか知らない。だからお前も黙っていてくれ」
「貴方様の命令なら拒否権がありませんわ。その代わり、シルフィ様と出会ったきっかけなどを教えていただきます。幸い、今日の予定はありませんので。さぁ、お茶でもしながら話をしましょう!」
 ガシッとマイカに腕を掴まれ、俺は頭をかかえたくなった。

 シルフィのことを根掘り葉掘り聞かれるだけならまだしも、絶対に『妬ましい』とか言われるのが目に見えているから。

 仕方がない。口止め料というわけではないが、今回は話に付き合うか。

 俺は覚悟を決めてマイカとお茶をすることにした。