「どうしよう……」
 私は自室にあるソファに座り、頭をかかえていた。
 目の前のテーブルに置いた四角い箱の蓋を開けると、ベルベットのホルダーにダイヤモンドがはめ込まれている。

 恒星にも負けない輝きを放っているダイヤ。

 私の親指の爪くらいでかなり大きい。
 私が子供用の手袋の修繕した時のお礼としてもらったものだ。

 実はこのダイヤが私の悩みの種。修繕の代金にしては高すぎる!

 もちろん、高価すぎて受け取れないから、メイドに返すように言った。

 でも、〝ダイヤを換金して代金にしてください。寄付してくださってもかまいませんので。幸運の手袋を直してくれたお礼です〟と拒否されたらしい。

 こうなったら、自分で返しにいこう!と思ったが、この案件が複雑だった。
 私は正体がバレてしまうのを恐れ、代理人を立てたが、依頼人も代理人を立てていた。
 どうやら依頼人は極秘の人物らしい。

 どこの大富豪の子の手袋を直したのだろうか……ダイヤをぽんと渡せるなんて、相当な大金持ちだろう。

「はぁ……どうしよう……依頼人の言うとおりに換金して寄付しようかな……」
 私は何度目かわからないため息を吐き出す。さすがにひとりでは決断を下すことができないので、お父様に相談しようかな。

 私は立ち上がると、ダイヤがはめ込まれた箱を手に取ってお父様のもとに向かう。

 結局、ダイヤは換金して寄付することになった。