アイザックと出会ってから、一ヶ月ほど経った。
 彼は長期滞在ではないので、私たちは王都を案内したり、ウォルガーや私の屋敷で遊んだりと、彼との時間を大切にしていた。

 最初はちょっとぎこちなかったアイザックも時間の経過と共にすっかり打ちとけ、今では本当に出会って一ヶ月というのが嘘みたい。

 楽しい時間はあっという間。いよいよ、明日、アイザックは帰国する。

 しかも、タイムリミットを迎えた今日は、なんとアイザックの誕生日。
 私とウォルガー、ラルフは送別会と誕生日パーティーを開催するために、現在私の家で準備にいそしんでいる。

 いつもは大人たちが難しい話をしている応接室は、今日はお誕生日仕様。
 カラフルな風船を飾ったり、テーブルクロスも純白から柄物のものに変えたり。
 壁には、みんなで作った【お誕生日おめでとう】という文字と四人の顔が描かれた紙も貼ってある。

「アイザック、喜んでくれるといいよな」
「うん」
 私とウォルガー、ラルフはメイドに手伝ってもらいながら、ワゴンからテーブルへケーキや軽食を移動させていた。

 三人でアイザックが喜んでくれる姿を想像しながら、準備をしているのをメイドたちが優しい笑顔で見守っている。
 数分後、部屋をノックする音がし、私たちは、いっせいに扉の方へ顔を向ける。

 もしかしてアイザックが来たのかも……!

 準備はすでに完了しているので、いつでも出迎えられる。

「シルフィ様。アイザック様がいらっしゃいました。お通ししてもよろしいでしょうか?」
「もちろん!」
 私が返事をするとゆっくり扉が開き、メイドと共にアイザックの姿が。

 アイザックは私たちを視界に入れるとぱぁっと顔を輝かせたけれど、いつもと違う部屋の様子に気づき目を大きく見開いている。
 状況が理解できないようで、おどおどと私たちの方を見た。

「お誕生日おめでとう!」
 重なった三人の声に対して、アイザックは身を固くした。かと思えば、だんだんと目に涙を滲ませうつむいた。