「アイザック!?」
私は彼の姿を視界に入れると口もとに手をあて固まった。
だって、アイザックは軍服に身を包んでいたから……。
漆黒の軍服には勲章がいくつもつけられ、腰には帯剣をしている。
軍服の上には黒いマントを羽織っているけれど、マントの内側部分は青い生地になっているようだ。
目を逸らすのがもったいないくらいに、格好よくて胸の高まりが止まらない。
「シルフィ」
アイザックは私のもとへ来ると、微笑んだ。
「綺麗だ。このまま誰にも見せたくないな。世の男たちはすべて君の美しさに惹かれる」
「褒めすぎよ。ねぇ、それよりこれはどういうことなの?」
「君を夜会に誘いにきたんだ」
「夜会……もしかして、城の?」
「あぁ」
「無理よ。私は外には出られないわ。それに夜会は……」
シナリオどおりならば、悪役令嬢であるシルフィは夜会で断罪される。
教科書を破くいじめ、階段から突き落とすいじめ。このふたつが現実に起こっているから、次は夜会での断罪。確率は高いだろう。
「シルフィ。みんなも君が来るのを待っている」
「みんな……?」
「マイカたちだ。大丈夫。俺を信じて。さぁ、決着をつけにいこう」
アイザックは私に向かって手を差し出してくれたので、私はおそるおそる手を伸ばして触れた。