「アイザック君。すまないが、シルフィのことを守ってくれないか?」
「もちろんです」
「そうか、よかった。君にならシルフィを任せられるからね。あぁ、それからシルフィ。さっきハーゼ家から使者がやって来てルイーザ嬢からの手紙を預かったんだよ」
そう言ってお父様が差し出してくれたのは、手にしていた封筒だった。
受け取ると、たしかに宛名の文字はルイーザのものだった。
「シルフィが休んでいる時、ウォルガー君たちが来てくれたんだ。彼らもシルフィのために動いてくれるそうだよ。君をとても心配していた。いい友人を持ったね」
「……はい。私にはもったいない人たちばかりです」
「では、私はアエトニア侯爵のもとに向かうとしよう。ほかの四大侯爵と今後について話し合うことになっているんだ。では、アイザック君。シルフィを頼むよ」
「任せてください」
お父様はアイザックの言葉を聞き、一度大きくうなずくと部屋を退出した。
私が気を失っている間にいろいろ物事が動いていたようだ。
最悪の事態が避けられないのならば、私以外の人たちに被害が及ばないようにしてほしい。
「私にできることってあるかな……?」
「ゆっくり休むことだ。顔色があまりよくない。横になるか?」
「ううん。大丈夫」
「わかった。じゃあ、蜂蜜たっぷりのハーブティーをもらってくるよ」
「ありがとう」
アイザックは微笑むと部屋を出た。
ゆっくりと息を吐いた時、ふと手にしていた手紙の存在を思い出す。
ルイーザからの手紙って言っていたわよね?
私は立ち上がると窓際まで行き、机の引き出しからペーパーナイフを取り出して封蝋と封筒の隙間に入れて引く。
中身を取り出すと便箋が一枚入っていた。
便箋の文字を視線で追っていくうちに私は目を大きく見開いてしまう。
【シナリオどおりに世界が進むのならば、悪役令嬢ポジションとヒロインポジションを入れ替えるわよ】ってどういう意味……?