「えっと……ウォルガーは……あっ、いたわ!」
 前当主であるお祖父様の肖像画の前で彼を発見。

 ウォルガーは挨拶に来た同世代の子供たちに囲まれながら、笑顔で応対をしている。
 最初は緊張した面持ちの同世代の子供たちも、ウォルガーと話をして次第に笑顔になっているのがすごい。
 コミュ力の塊なんだよね。あの性格はすごくうらやましいわ。

「ウォルガー」
 私が近づき声をかければ、みんな端によけて通してくれた。
「ウォルガー、お誕生日おめでとう! プレゼントを先に届けてもらっているはずなんだけれど届いているかな?」
「届いているよ。すごくうれしい。ありがとう」
 ウォルガーが肩を揺らして笑った。

「プレゼントのお礼代わりに、シルフィが大好きなケーキを用意しているぞ」
 そう言ってウォルガーが視線で指したのは壁際。
 真っ白いクロスの敷かれたテーブルには、銀のトレイに盛られた料理やケーキなどのデザート類が並べられている。

 プチケーキからホールケーキ、パイ系もあるのかな?

 さっと見ただけでも、かなりの量と種類がありそう。
 私はもともとカフェ経営を夢見ていたため、ケーキなどの甘味が大好き。

 こっちの世界のカフェにも行きたいけれど、貴族令嬢だからいつも馬車の送迎付きで、好きな時にふらっとカフェに立ち寄ることもできないんだよね……。

「ケーキをいただいてこようかな。ウォルガー、なにか食べたいものある? 私、持ってくるよ」
「いや、俺はまだいいや。シルフィ、食べてきなよ」
「じゃあ、ちょっといってくるね」
 私は周りにいる子たちに軽く挨拶をして、ケーキの所に真っすぐ向かう。

 楽しみでつい頬が緩んでいくのを抑えきれずにいると、視線の先に気になる人を捉えて足を止めた。