「ああっ! 削っても削っても終わりがまったく見えない。無限ループだわ! 自動のかき氷機が欲しい」
「ねぇ、ルイーザ。腕、大丈夫? 交代するよ」
 そう尋ねると、ルイーザは首を横に振った。

「平気。シルフィ、腕がまだ痛いんでしょう? 無理しちゃダメよ」
 かき氷機は自動ではなく手動。
 そのため、かき氷が日に日に需要が高まっていったせいで、ついに私の腕が悲鳴をあげたのだった。

 ルイーザとマイヤーヌが交代でやってくれているけれど、ふたりとも腕が厳しそう。

「でも、ふたりにだけ負担をかけるわけには……。やっぱり、かき氷の季節だけ臨時でバイトを雇うことにするわ。さっそく、仕事が終わったら求人募集をかけるね」
 私がそう言うと、ルイーザがかき氷機から手を離して私の方を見た。

「ねぇ、求人募集はちょっと待ってくれない? 実は心あたりがあるの。アイザック様はどうかしら?」
「アイザック?」
 突拍子もなく出てきたアイザックの名を聞き、私は首をかしげる。

 かき氷機とアイザックの接点が浮かばない。
 どうして、ルイーザはアイザックを指名したのだろうか。

「ほら、だって筋肉すごいし。メイドカフェの事情も知っているから適任だと思う」
 たしかに、一理ある。私たちの正体も知っているし。
 後でホールにいるマイヤーヌの了承を得たら、アイザックの屋敷に立ち寄って聞いてみよう。
 私はそう判断すると、ルイーザにオーダーを告げた。