そう思っていたのは私だけではなかったみたい。
隣にいたルイーザからも同様の声が聞こえてきた。
「なんか寂しいわね。あの子がいるだけで賑やかだったからさ」
「えぇ」
「あっ、でもこれでシルフィはアイザック様とゆっくり話をすることができるか。ここの庭園、王都の人工的な庭園構造と違って自然的な感じだから見応えがあるそうなの。どうかしら? シルフィ。アイザック様を庭園へ案内してさしあげては?」
「みんなは?」
「私たちはサロンでまったりしているわ。迷路ではしゃぎすぎて疲れちゃったし。アイザック様、どうかしら?」
「ありがたく言葉に甘えるよ。シルフィ、案内してくれるか?」
「もちろん」
私の返事なんて聞かれなくても決まっている。
アイザックと一緒にいられるんだから……。
みんなに見送られながら私たちは再び庭園へ向かった。
バラの迷路の手前にある庭園は自然本来の姿がそこにあるという印象を受ける。
王都は色鮮やかで濃厚な香りのする植物を好むが、ここではハーブなどの植物も植えられている。
ウォルガーが昔、『魔女の庭っぽいよな』と言っていたが、言い得て妙だと思う。
私はメイドから渡された日傘を差しながらアイザックの隣を歩いているんだけれど、ちょっと日傘分のスペースが空いているのが寂しい。
「ここ、うちの庭と似ているな」
「そうなの?」
「あぁ。ミニム王国は計算され尽くした芸術的な庭という感じだが、うちのは有事の際に使用できるように薬になる植物を中心に植えてあるんだ。毒性が強いものは薬草園で厳重に管理されている」
「有事の際って……」
ぞくりと背中が寒くなる。
襲撃事件の時の彼の姿が浮かび、私はとっさに彼の腕に手を伸ばした。
すると、アイザックが安心させるように微笑んだ。